第8章 ☆遠くて、遠い。【西谷夕】休止してます、、、
…彼の第一印象は、"小さい"。ただそれだけだった。
リベロだとしても夜久さんよりも小さい。
彼は160あるのだろうか。
最初は本当にそれだけ。それ以外のことは何も思わなかった。
「もし烏野にマネージャーがいたら、お前友達になってこい!そんで俺に紹介してくれ!!」
烏野との練習試合の前日の夜、食器の片付けをしていた私に虎がそう言ってきた。
「…悪いけど、私コミュ力低いから」
「…だよなぁぁ、研磨みたいだもんなぁ、お前」
研磨みたいとは失礼だな、私研磨よりは遥かに高いんだけど。
そう思ったけど声には出さない。
でも残念ながら研磨ほどではなくても、高くないものは高くない。
ましてや他校の人と仲良くなるなんて難しいし、キツイ。
いわゆる私は人見知りってやつなのだ。
「しかも虎、女子と話せないじゃん」
「うっ、それはだなぁ、練習すれば……っ!!」
結局私が頑張ったとしても虎がこれじゃあ意味はない。
唸る虎を置いて、自分の部屋に戻ろうとする。
みんなが終わったらお風呂に入って、早めに寝ないと。
「…あ、研磨」
「…シホ」
するとお風呂から出てきた研磨と偶然会った。でも特に話すことはないのでお互い沈黙。
名前呼んでしまったのに、話すネタが思いつかない。
でもこれも、私と研磨との間じゃいつものことだ。
「…明日だね、烏野」
「そうだね」
きっと研磨のことだ、別になんとも思ってないんだろう。
低燃費で特に欲もない彼はいつもそんな感じだ。
いつもだったらそんな感じなのに。
「……明日、少しだけ楽しみだよね」
そう言って少しだけ笑う彼のこと、初めて見たかもしれない。