第12章 ♢ストレートと不器用。【白布賢二郎】
「し、らぶ」
「顔、赤いけど」
「…それは白布もだと思う…」
「…うるさ」
バツの悪そうな顔をすると白布はそのまま手首をぐっと引っ張った。
気付けば目の前いっぱいに白布の顔。
「んっ、」
白布によって塞がれた口は少しだけ強引で。
でも何故か優しく感じて。
一度離したかと思うとすぐ角度をかえてまた塞がれる。
…掴まれた手が、熱い。
これは私の熱か、それとも彼の熱か。
「〜っ、」
「油断してるとまたするから」
そう言って私からパッと離れる。
心臓の高鳴りはいつにも増して煩く鳴り響く。
「…白布にだったらいい、し」
「…煽ってんの?シホ」
ふと呼ばれた名前。
何回白布に名前を呼んでもらうことを妄想しただろうか。
片思いしてる1年と少し。
何回も何回も妄想して悲しくなったことを思い出す。
「変な顔、」
そう言って笑う白布の顔は、今まで見たどの表情よりも愛しかった。
おわり