第12章 ♢ストレートと不器用。【白布賢二郎】
夏、期末テスト前ラストの練習。
いつものように練習をして、終わるとそのまま部員全員で部室を出た。
遅くまで部活をしているため、この時間に学校内にいる生徒はそこまで多くはない。
「あれ、白布じゃん」
「前田、お前帰るの遅いな」
その声にふと振り返ると、近くに同じクラスの前田がいた。日が暮れるのが遅いとはいえだいぶ時間は遅い。
「友達とテスト勉強してたら遅くなったー」
ちょっと話すぎちゃって、と笑う彼女。きっとテスト勉強という名の雑談をしていたんだろう。
誰とでもよく話し、愛想のいい前田は少しバカで。でも、人のことをよく見てるような奴だ。
「なになに〜?賢二郎の彼女〜??」
「違います。クラスメイトです」
天童さんがひょいっと俺の横から顔を出した。相変わらずこの人はどこから出てくるか分からない。
「こんばんは〜」
「え〜いい子じゃん。こんばんは〜」
天童さんが俺の肩をぽんっと叩くが、こいつと俺はただのクラスメイトであって特になにもない。