第11章 *アルコールと冬【北信介】
二人で椅子に座り、箸を進めているとふとシホが話し始めた。
「北さん、かっこよかったです」
「なんや、褒めてもなんも出てこないで」
「お世辞じゃないですよ、本当、いつもかっこいいです」
そう言うとまた、飯を食べ出す。でも食べ出したかと思うといきなりこっちをみて照れたように笑った。
『北さんほんま、今日かっこよかったです』
そう言えば、同じようなことを彼女に前に言われたことを思い出した。
あれは、そう、春高で烏野に試合で負けた後に。
侑の応援に来ていた彼女のことは少しだけ知っていたが、別に仲良いわけではなくて。でも何故か終わった後、そう言われたのだ。
『俺は、なんもしてへんよ』
凌ぎ役やし。
いきなり話しかけられ驚いたものの、そう返した。でも彼女はまた俺の目を見て、
『北さんは、いつもかっこいいですよ』
と照れたように笑った。
「シホはほんま、変わらんな」
思わず笑うとシホはびっくりしたようで、「え、え?なんでですか!?いきなりなんで!?」と焦り出した。
あん時と同じように笑ったシホのこと、ちょっと思い出していたなんて内緒や。
…ああほんと、あんたのこと好きや。
おわり