第11章 *アルコールと冬【北信介】
「北さん…あの、手繋いでもいいですか」
勇気を出して私はそう言った。
季節は冬。珍しくお互い仕事の終わる時間が一緒だったので、家の最寄駅から一緒に帰ることにした。
いつもは別々に帰るが久しぶりの2人きりの帰り道。同棲しているもののこのなんとも言えないドキドキ感はまだ続いてる。
どことなく高校生の頃を思い出す。
そのせいか、何となく当時のようなことがしたくなり思い切って、手を繋ぎたいと言ってみたのだ。
「ええよ」
一度はそのパッチリした目でわたしを見たが、そのまま特に表情を変えずスッと手を出してくれた。
可愛い…っ、北さん昔から本当可愛い…っ。
寒いにもかかわらず手を出してくれたことに感謝と思い、私もその出された手に触れ…、
バチッ。
「っ!?」
二人の手の間で思いっきり静電気が走り、北さんも思わず手を引っ込めた。
あ…忘れてた…。
「繋ぐのは今度にしよか」
「…はい」
そう、北さんは静電気が嫌いである。いや、静電気好きなやつなんていないだろうけど、北さんは本当に静電気が嫌いだ。
あ〜なんで、静電気除去グッズを忘れたんだろ〜!!!と悔やむがもう遅い。お預けである。