第8章 ☆遠くて、遠い。【西谷夕】休止してます、、、
「…黒尾さん、なんて打てばいいですか」
もうこうなったら黒尾さんに聞くしかない。
なんか…ベテランそうだし。
でも彼は少しだけ口角を上げて笑った。
「それは自分で考えなきゃな〜」
私の髪をくしゃっと撫でて、「研磨風呂行くぞ〜」なんて言って私の元から去っていった。
見捨てられたような、面白いから悩ましておこう、みたいなそんな感じ。でもどこか黒尾さんらしくしょうがないかとも思ってしまう。
"今日はありがとう。また試合観たいです。"
そう送ってみた。
…送信するためのボタンを押すのにあんな時間がかかるなんて、初めて。
…馬鹿だな、なんか。
思い出せばあのオレンジ色の彼のことばかりで、
なんだか目に焼き付いてしまったみたいで頭から離れない。
…あんなにバレーに釘付けになったのはいつ以来だろう。
「…っ!へ、返事きた……」
送って10分も経たない内に彼からの返事がきた。
“おう!また試合やろうな!!!”
短い文。
でもまた会える。
また試合やろうってことは、また彼に会える。
その短い文の中には小さな約束みたいなのが含まれているように感じて、嬉しくて心がぎゅっとなった。
…そして、東京の合宿で彼と会えることが決まった。