第4章 嬉しい癖に
「……ディートリヒ」
「ん?」
「前に『太陽もあなたの髪も特別な金色』って話をしたの、覚えてる?」
「あぁ。そういえばしたことがあったな」
「それね、間違ってなかったよ」
エルフィの手が伸ばされ、ディートリヒのさらりとした金色の髪に軽く触れた。
「とても綺麗で、とても特別な色」
「…………」
「私が思った通り、素敵なんだね」
無表情のままエルフィはそう告げる。ディートリヒはそっと目を伏せる。どちらが、とは訊かなかった。
「……前にも言っただろう。別に珍しい色じゃないと」
「嬉しい癖に。ほら、ディートリヒ笑ってる」
フラスコから出て、少しずつ人間らしいことを言い始めた彼女に、ディートリヒは愛おしそうに目を細めた。
「君も、十分素敵だ」
エルフィの銀色の髪も、白くなめらかな肌も、宝石のように美しく赤い瞳も、何もかもが日の光に照らされ素敵だった。
ディートリヒの混じりけのない素直な言葉に、エルフィは何度かゆっくりと瞬きをする。
「……嬉しい」
その一言を呟いた瞬間、エルフィの口元に太陽のような笑顔が咲いた。
いつも淡く笑むことしかしなかった彼女とは思えないほどの輝く笑顔に、ディートリヒは目を見開いた。
色とりどりな花々のどれにも負けないくらい明るくて華やかで、どこか上品で。
目を細め、今にも声を上げて笑いだしそうなエルフィを見て、ディートリヒも今までにないくらいの笑顔になっていた。