第4章 嬉しい癖に
この短い期間であまりにも新しいことや驚きに満ちたことが溢れていた。
そんな状況を何だかんだ言いながらも受け入れてきた自分を見つめながら、ディートリヒはこれからのことを少しだけ思い浮かべる。
エルフィが兵士たちに何をしたかはわからないが、もう二度とこの村に彼らは来ないという妙な確信があった。
だが、エルフィのことはいずれ村人たちに知られるだろう。しかしこれ以上隠すのも気が引けるが、彼女を村人に会わせるちょうどよい口実も思い浮かびそうになかった。
「これもどうするべきか……」
ポケットの上から賢者の石に触れた。あれだけ求めていた物だったにも関わらず、いざ手に入ってみるとどうでもよい存在に思えてくる。元から金銭には興味がなかったし、今ではエルフィの方がずっと大切だからなのだろう。
「……まあいいか」
深く考えすぎても迷うだけだ。先のことは焦らずゆっくり考えていこう。
エルフィの隣に横になる。久しぶりに感じる草と花々の匂い。
「ディートリヒ……外の世界って、素敵だね」
エルフィの笑みを含んだ声に、ディートリヒは小さく応じた。アルベルトとアニータの笑い声が近づいてくるのを聞きながら、ディートリヒは目を閉じる。春の陽光がいつもに増して心地よかった。