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太陽が咲いた

第4章 嬉しい癖に


「大丈夫か?」
「うん」

 先に外へ出ていたアルベルトとアニータの笑い声が庭から聞こえてきた。玄関のドアノブに手をかけたディートリヒは、確かめるように振り向いた。

「ここから先は外の世界だ。いいか」
「…………」

 エルフィは何も言わない。ただじっと扉を見つめていた。

「……!」

 ディートリヒがゆっくりと扉を開けると、春の陽光がディートリヒの金髪を、エルフィの銀髪をそれぞれ照らす。春風に2人の髪がさらりと流された。
 始めて浴びる日の光は、エルフィにとって強烈なはずだろうに、彼女はそれを気にするそぶりもなく前へと1歩踏み出した。

「これが……外の世界」

 エルフィの手がディートリヒの手を離す。はだしのまま階段を下り、土へと足を下ろした彼女はそのまま膝から崩れ落ちるように座る。

「エルフィ……!?」

 慌ててディートリヒが駆け寄るが、エルフィはじっと地面を見つめている。その視線を追うと、そこにはたんぽぽの花が2輪、寄り添うように咲いていた。
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