第4章 嬉しい癖に
「外を見てみたいのか?」
「うん」
「……太陽とか、花とか?」
「そうだよ」
「見るのはいいが……太陽は長く見すぎるなよ。目が悪くなる」
「わかった」
淡々と返事をするエルフィだが、ディートリヒの胸中は不安でいっぱいだ。そもそも、日の光に当たっても無事なのかがわからないのだ。
それでも、しっかりと出口を見つめている彼女に反対することはできなかった。
「持ってきたよ~! お母さんのお古だけど……」
「ちゃ、ちゃんと綺麗なやつだから大丈夫!」
アルベルトとアニータが少しだけ色あせたドレスを持ってきたので、ディートリヒはそれをエルフィに渡し、一度地下室から出る。
数分後、何とかドレスを着たであろうエルフィが出てきた。アルベルトたちの母親の物だということで、もう少し年齢の上の女性なら似合うだろうが、ディートリヒと同じかそれより下に見える彼女にはどこか不釣り合いだ。
「うーん……ちょっとおねーさんには似合わなかったね……」
「とりあえずはこれでいいだろう。また新しく服を買うさ」
ディートリヒはエルフィに向かって手を差し伸ばす。エルフィは首をかしげていたが、ゆっくりとその手の上に自分の手を重ねた。ディートリヒはやさしく彼女の手を握った。
狭い地下階段から、ディートリヒの寝室、そしてリビングへと向かう。カーテンが閉めてあるとはいえ、地下よりもずっと明るい室内に、エルフィの肩がびくりと揺れた。