第4章 嬉しい癖に
「ディートリヒ、どうしたの」
「いや……何でもない。これは君に返そう」
「ううん、いらない。私よりもあなたの方が大切に使えると思うから」
「……だが」
迷うディートリヒに興味をなくしたのか、エルフィはゆっくりと立ち上がった。まだバランスが上手くとれないのか、足元はおぼつかないが、真っ直ぐに出口へと向かっていく。
「どこへ行くんだ」
「外」
「待て、外に出たらどうなるかわからないんだぞ」
「私の体はきっと人間の体だから。大丈夫」
ディートリヒが引きとめようとするが、エルフィは気にも留めずにふらふらと歩き続ける。
「ま、待ってよ、おねーさん!」
「そんな格好で外に出ちゃダメだって!」
アルベルトとアニータがエルフィの前に立ちふさがり、一度彼女を椅子に座らせた。
「ここで待ってて。ドレスを持ってくるからっ」
「……お母さんのだけどね」
パタパタと駆けていく2人を見送ると、ディートリヒはエルフィの隣に座った。