第4章 嬉しい癖に
「そ、そうだよっ。ドミニクおじさんも、エラお姉ちゃんもみーんなディートリヒさんのことを必要としてるよ!」
「ずっと、ずーっとここにいなきゃダメだよっ!」
先ほどまでの不安にまみれた表情とは大違いの笑みを浮かべて、2人はディートリヒの胸に飛び込む。
スキンシップなんてろくにしたことのないディートリヒは一瞬硬直してしまうが、嬉しそうに「へへっ」と笑う2人につられて小さく笑っていた。
「…………」
その様子をいつもと同じ無表情で見ていたエルフィだが、何を思ったのか、アルベルトとアニータの上からディートリヒを抱きしめた。押しつぶされた双子が驚いて身をよじる。
「わーっ!?」
「……何をしているんだ、君は」
「人間はこうするんでしょ……?」
「君は本当に人間の真似事が好きだな……服といい、ベルトといい……」
そこでハッと重要なことを思いだしたディートリヒは、周りに3人をくっつけたまま体と腕を伸ばす。
エルフィが横たわっていたところに、赤い石が転がっていた。ルビーほど透明ではないが、血よりは透き通っている不思議な石を手に取ったディートリヒはじっくりと観察する。