第4章 嬉しい癖に
「ぼ、僕ら、村の皆には秘密にするから、村を出ていくとか言わないよね?」
「どこにも行っちゃわないよね?」
まだ幼い2人になりに必死に理解しようとし、ディートリヒのそばにいたいと訴えるのを見て、ディートリヒは言葉を詰まらせる。
「そうだな……どうしようか」
「……っ!」
「そんなこの世の終わりみたいな顔をするな」
くるくると表情を変える双子の様子に、困ったように笑う。
ディートリヒはため息をついて、以前よりも酷く散らかった地下室を見渡す。瓶が割れて、薬品が散乱している。また新しく薬を作りなおさなければならない。
「まあ、この村を出たところで平和な日常が待っているとは思えないしな」
「!」
「それにここの村の人は皆どこかそそっかしくて、しょっちゅう怪我をしているから俺がいないと不便だろう。君たちのご両親のパンが食べられなくなるのも残念だしな」
その言葉を聞いて、双子の瞳が星のようにきらきらと光り、口元に無邪気な笑みが輝いた。