第4章 嬉しい癖に
慌てて視線を横に逸らしながら、ディートリヒは彼女が着られるものを探す。自分のコートを部屋の隅に見つけると、急いで立ち上がってそれを取り、できるだけエルフィを見ないようにして渡す。
「? これをどうするの?」
「き、着るんだ、今すぐに」
「どうして?」
「どうしてもこうしてもだ。って、前にもこんな会話をしたな……ほら、ちゃんと前のボタンも止めておくんだ」
何とかエルフィがコートを着ると、ディートリヒは大きく安堵のため息をついた。
そこでアルベルトとアニータのことが心配になったディートリヒが部屋の隅を見ると、2人は身を寄せ合っていた。
ホムンクルス、という言葉は知らなくても、先ほどの光景やエルフィが【異常】なものであったことぐらいはわかるだろう。
彼らに何て言えばいいか迷い、ディートリヒは下唇を軽く噛む。
「ディートリヒさん……」
「えっと、あの……」
ディートリヒの迷いを感じたのか、2人は不安げな瞳をおどおどと向けてきた。
「よ、よく難しいことはわかんないし、あの兵士さんたちのことも全然わからないけど……」
「でも、そのおねーさんはディートリヒさんにとっては『大切』なんだよね」
ディートリヒはちらりとエルフィの方を見る。彼女はフラスコの中にいたときと同様に、膝を抱えるように座りぼんやりと宙を見ていた。
ディートリヒは双子に顔を向け直すと、小さくしかしはっきりと頷いた。
「……あぁ」
その言葉に2人は泣きそうな表情になった。