第4章 嬉しい癖に
「!?」
彼女の小さかった体躯と頭部が瞬く間に成長し、手足がしなやかさを帯びて伸びていく。
腰と同じ大きさだった胸周りがふくらみ、それに反して腰は女性的なまろやかな細さへとなった。銀色の美しい髪は腰まで長くなり、埃っぽい地面に水銀のように広がる。
そこにいたのは、小さなホムンクルスではなかった。紛れもない人間の女性だった。それも並大抵ではない美しさの持ち主の。
「……“黒と白が合わさりしとき、完全となる”……」
命の構造に書かれていた一文を、ディートリヒは無意識のうちに呟いていた。あの言葉の意味を、ようやく彼は悟っていた。その呟きを聞いて、硬直していたゲラルトが我に返った。
「な、何をしておる! さっさと錬金術師とその忌まわしい魔女を連れて行け!」
「で、ですが……!」
「早くしろ!」
焦ったように怒鳴るゲラルトだが、部下はすっかり度肝を抜かれてしまいおろおろとするだけだ。
ディートリヒがその隙をついて、兵士の一人を足で蹴り飛ばしたとき、エルフィの側にいた兵士が慌てて彼女の肩に手をかけた。