第3章 よく言えるよ
「うわぁ……!」
2人が階段を下りていくと、壁際のランプに火が灯り、アニータは感嘆の声をあげる。先ほどまでの怯えなんて後かたもなくなり、キラキラとした目で地下への道を急ぐ2人。
研究室への扉の前まで来た2人は、高なる胸を抑えながら扉を開けた。ランプの灯る室内は仄かに温かい。
「ここ……ディートリヒさんの仕事部屋なのかな」
「難しそうな本がいっぱい……何これ。命の、構造?」
二手に分かれ、中央に置かれた机を左右から回り込むようにして、ゆっくりと2人は歩く。途中、机の上に置かれている本や実験器具を軽く指でなぞる。
暖炉の前で合流した2人は周りをきょろきょろと見回した。
「ねぇアルベルト、見て! お人形が入ってるわ」
「本当だ……凄くリアルだね」
アニータが暖炉に置かれているフラスコを除き見て、はしゃいだ声をあげる。フラスコの中に入っている少女の姿をした存在が目を閉じて横たわっていた。
「ディートリヒさん、お人形が好きなのかなぁ」
「こんなにお花をいっぱい周りに飾るぐらいだもん。相当だよ」
興味深そうにフラスコを除いていると、少女の足がピクリと動いた。
「! あ、アニータ! 今、足が……!」
「き、気のせいよっ」
「そ、そうかな……」
驚いて後ずさった2人は、ぎゅっとお互いの手を握りあう。そのときだった。