第3章 よく言えるよ
「どうした!」
リビングへ駆け戻ると、アニータとアルベルトが部屋の奥で身を寄せ合って震えていた。
玄関の扉から鎧を着た10人弱の兵士たちが入ってきているのだ。その兵士たちの先頭に立っている男は嫌というほどよく覚えていた。
「ゲラルト……」
「また会ったな。医者先生殿。貴殿の家を調べさせてもらう。あぁ、令状ならここだ」
1枚の紙切れをディートリヒの足もとに投げて寄こすゲラルト。それを一瞥したディートリヒは、双子に視線だけで奥の部屋を指す。
「……アルベルト、アニータ。奥で待っていてくれ」
ディートリヒの言葉に2人は怯えた表情でコクコクと頷き、奥の部屋へと走り去っていく。
「……俺はただの貧しい医者ですよ。錬金術師なんかじゃありません」
「それは我々が判断することだ。……行け」
「待て!」
部下に指示を下したゲラルトに詰め寄ろうとする。だが、すぐさま兵士2人が後ろから羽交い締めにされてしまった。ゲラルトはディートリヒを見下ろし鼻で笑う。ディートリヒは怒りを隠そうともせず、彼を睨みつけた。