第3章 よく言えるよ
「出かけるの?」
「あぁ。また材料を買わないといけないし、そろそろ食料もなくなりそうだからな。帰りに何かまた持ってきてあげよう。何がいい」
「花。太陽」
「……また太陽か。君は本当にそれが好きだな」
「ねぇ、太陽ってどんな感じ?」
「前にも似たようなことを言っていたな」
「もっと具体的に。色とか」
「説明しても君は見たことがないから、あまり意味はない気がするが……」
「あなたに説明してもらうのがいいの」
一瞬、彼女の言葉にどきりとしてしまうが、当の本人は相変わらず無表情で他意などないことがよくわかる。
ディートリヒは内心ため息をつきながらも、顎に指をかけ少し考える。
「……そうだな。形は球体で、色は金色だが、夕方には赤くなったりするな」
「金色……あなたの髪の色みたいに?」
「え?」
予想外の言葉にディートリヒは少し目を丸くしてしまう。父親譲りの真っ直ぐな金髪に指先で軽く触れた。
「太陽もあなたの髪の色もとても綺麗な色なんだね」
「……別に珍しい色じゃない」
「そうかな。あなたの色は特別な気がする。きっと太陽もあなたと同じで特別なんだと思う」
「……そうだな」
今まで誰かにそう褒められたことなかったので、言葉がしどろもどろになってしまう。軽く咳払いをして、そそくさと地下室の扉を開けた。
ぱたん、と扉をしめたディートリヒはほのかに赤くなった顔を隠すように手の甲を口に押しあてた。