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太陽が咲いた

第2章 色とりどりな


「!?」
「どうしたの」

 膝をついているといえど、フラスコを見下ろす形であることには変わりない。目を伏せてもエルフィの体が目に入ってくる。
 今のエルフィはまさしく生まれたままの状態だった。そのことにやっと気付いたディートリヒは、慌てて片手で顔の半分を覆って彼女から目をそむける。

「何?」
「いや……そういえば君は何も着ていなかったんだな……」
「人間が身につける『服』というもの? フラスコの中は温かいし、危険な物もないから必要ないよ」
「そういう問題じゃなくてだな……」
「それなら、君が男性特有の生理現象を起こすから? 私は気にしてないし、君も悩む必要ないよ」
「だ、だからそういう問題でもなくて……」

 エルフィは知識は豊富だが、実際は人間としての感情や常識に疎い。今の彼女に説明しても実感がわかないだろう。
 ディートリヒはコホン、と咳払いをすると、棚から布と針に糸、それからハサミを取りだす。

「君は外の世界に出たいんだろう? なら、できる限り人間と同じ姿でなければダメだ。まずは服を着ることだな」
「うん」
「久しぶりに裁縫なんてやるから、上手くできるかはわからないが……え? 自分でやるのか?」

 エルフィが両手を差し出してくるので、ディートリヒは戸惑いながらも、ハサミ以外の材料を入れてやった。

「ハサミは流石に入らないな」
「大丈夫、いらない」

 エルフィはフラスコの底に落ちた布を浮かすと、ハサミも使わずに切っていく。針の穴に糸を入れ、ゆっくりと衣服を作っていく姿を見て、ディートリヒは感嘆の息を零した。
 エルフィは裁縫の仕方は知識としては知っているのか、迷うことなく次々つくりだしていく。
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