第2章 色とりどりな
「……これだ」
「?」
「“賢者の石”……これを作ることができれば、君の体もどうにかできるかもしれない」
ホムンクルスの生成方法が書かれてあった『命の構造』という本。そこには賢者の石の生成方法についても書かれてあるのだ。
「万能の石」「神のような存在になれる石」「幻の石」など、様々な噂の流れる石だが、実際に生成できたものはいないとされている。
もしかするといるのかもしれないが、少なくとも公になっていないことは確かだ。
「石を金に変えることには興味がないが、君の体をつくることができたんだ。やってみる価値はあると思う」
「外に出られるの?」
「あぁ、成功したらな。それまでは俺が可能な範囲で君のところに外の物を持ってこよう。持って来られなくても、俺ができるかぎり君に説明してあげることもできる」
フラスコの前にしゃがみ込み、ディートリヒはぎこちなく微笑む。膝を抱えるように座っていたエルフィはパッと立ちあがり、フラスコの側面に手をついた。
「本当?」
「あぁ」
いつものように無表情ではあるが、その瞳には今まで一番人らしい輝きが満ちていた。彼女の外の世界に対する憧れをはっきりと感じたディートリヒは何となく気恥ずかしくて目を伏せる。