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太陽が咲いた

第2章 色とりどりな


 ***

 ディートリヒが家に帰ってきたときにはもう夜中だった。兵士たちは小屋を調べたり、村人に聞き込みをしたり、ディートリヒを尋問したりと忙しそうだったが、太陽が半分ほど西に沈んだことに気付くと、しぶしぶながらもディートリヒを解放した。
 ディートリヒの質素な外見で貧しい村医者と判断したのか、深追いされなかったのが幸いだった。
 彼らは近くの宿屋に泊まり、明日朝早くに出発するそうだが、彼らのいささか礼儀に欠けた高圧的な態度を見て、今夜にでも出て行ってほしかった。
 本当はすぐに家に帰る予定だったが、昼間の騒ぎにすっかり疲弊してしまい、アルベルト兄妹に誘われるまま彼らの家に行き、夕食を食べてきたのだった。

 我が家に入り、扉の鍵を閉める。速やかにリビングやキッチンに行き、それぞれの窓に鍵がかかっているかを確認してカーテンを閉める。
 ディートリヒははやる気持ちを抑え、寝室から地下室の階段を下りていった。

「エルフィ……?」

 ちゃんと鍵がかかっていたことに安堵しながら、地下室へと入る。壁際のランプが次々に点いて、室内を仄暗く照らす。
 そこで違和感に気付いた。物が異様に少ないのだ。普段なら机の上や床に散乱している書類や器具が見当たらない。
 それだけじゃない。先ほどリビングを通ったときも足元に物が当たらずに通れていたのだ。
 訝しげに周りをぐるりと見渡すと、物がなくなっていたのではなくて、全て本来しまわれていなければならないところにしまわれていただけだった。
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