第2章 色とりどりな
――面倒だな。
舌打ちしそうになるのを抑え、ディートリヒは慎重に令状を返す。
「……わかりました。どうぞご自由に」
「うむ」
ゲラルトが背後の部下に指示を出すと、鎧を着た男たちがすぐさま小屋に入ってきて鞄の中や薬品を調べ始める。
ディートリヒは怯えた表情のアルベルトとアニータの腕を引っ張って外へと出た。外では村人たちが遠巻きに様子を窺っていた。ディートリヒが彼らに近づくと、村人の一人が心配そうに眉を下げた。
「大丈夫ですか、ディートリヒ先生」
「気にしないでください。すぐに帰るでしょうから」
そう答えるものの、家も調査すると言われるんじゃないかと思い、内心ひやひやしているのは確かだ。
錬金術に関連するものは持ってきていないし、調合した薬に関しても心配することはない。所詮はただの兵士。正確な薬の知識を持っているとは思えない。
それでも万が一のことを考えると、楽観視しているわけにもいかないのだ。
思わず片足でとんとんと地面を蹴ってしまう。この調子じゃ午後からの診療はできないかもしれない。
とにかく、地下で待っているエルフィに早く会いたかった。