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太陽が咲いた

第2章 色とりどりな


 ***

「……この薬を服用して、安静にしていれば頭痛は治まるはずです。服用方法は以前お渡ししたものと同じです。もし何かあれば俺に声をかけてください」

 熟年の女性に小瓶に入った飲み薬を渡しながら、ディートリヒは薬について説明をする。薬を受け取った女性は頭痛がするのか少し苦しそうに眉をひそめていたが、薬を受け取ると小さく微笑んでお礼を言った。

「ありがとうございます、先生」
「……いえ」

 お辞儀をして診療小屋から出ていく女性を見送ると、ディートリヒはため息を一つついた。窓の外にある太陽を見ると、随分と高い所に昇っており、すでに昼近いことがわかった。

――午前の診療はここまでにしよう。

 立ち上がって一度扉の外に『休憩中』の札を出そうとしたディートリヒがふと目を上げると、アニータとアルベルトが走ってくるのが見えた。アニータの腕には布の被せられたカゴが下げられている。

「ディートリヒさん!」
「お昼ごはん持ってきたよ!」

 ディートリヒに駆け寄った2人はにっこりと笑うと、カゴを彼に差し出した。布を取ってみると、焼き立てと思われるパンがいくつか入っていた。アルベルトとアニータの両親はパン屋を営んでいるので、よくパンの差し入れを持ってきてくれるのだ。
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