第7章 鎌ノ助とそれから
真田の城に程近い森で、いくらか大人びた鎌ノ助が歩いていた。
傍らには、彼によく似た少年が、一生懸命付いて歩いている。
方向音痴まで遺伝したのか、このまま歩いて行ってもどこにも辿り着けないなどとは、知るよしもない顔である。
「おかしいな……町のほうに行こうと思ったんだけど」
「ぼく、もうつかれた……」
息子がしゃがみ込んだので、鎌ノ助も足を止める。
あれだけ歩かせたから、これは駄々をこねられるだろう。
「えーと……おんぶしよっか」
「なまえがいい」
「後でみたらし団子食べさせてあげるから、とりあえず」
「なまえがつくったのじゃないとやだ」
この息子はつくづく自分似だと、鎌ノ助は自分でも思う。
仲間からも、散々お前の生き写しだと言われた。
なまえの要素を探すのが難しいくらいに鎌ノ助似だが、二人の子供だ。
鎌ノ助なりに、大事に思っている。
「なまえじゃなきゃやだ……」
「その気持ちは……分かる」
息子の言葉に思わず同意してしまった鎌ノ助だが、そうではない。
「だっこも団子も、もう無理だよ。だって、なまえは……」
鎌ノ助の瞼が、深く閉じた。
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