第6章 鎌ノ助の求婚
城に戻ってきたなまえは、手当てをするべく鎌ノ助の部屋に居た。
「染みるからね?」
「えぇ……嫌だ」
鎌ノ助は、消毒しようとするとすかさず避けるので、手当てにならない。
とうとう手首を捕まれ、動きを封じられてしまった。
「ね、そんなのより、僕なまえの血が吸いたい」
「え……待って……」
「良いよね? 僕と結婚するんだもん」
治療道具を落とした指を、鎌ノ助の唇に食まれる。
付け根に牙を突き立てられて、なまえの身体がブルンッと震えた。
「皆はさ」
「え、っ?」
「大家族がいいって言うんだけど、僕はなまえと二人きりがいい。……あ、でもなまえ似の子なら欲しいかも」
暑い呼吸が、指から全身を熱くしているようだった。
牙が刺さり、溢れ出る血が鎌ノ助の口許を赤くさせる。
「ね、あんたは?」
べろりと、余すことのないよう舐める舌。
吸っても吸っても、まだ足りない。
「鎌ノ助くんで手一杯だよ……」
「そっか」
鎌ノ助は笑う。あどけなく、無邪気に。
幼稚で幼い愛を、育んでいけると知ったから。
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