第1章 鎌ノ助のおねだり
近くの村で厄魔が出たので、真田軍の皆は退治に向かった。
部屋で待っていたなまえは、先程の鎌ノ助の言葉を思い出す。
『眠いけど……あんたがご褒美くれるなら、頑張ってくるよ』
なまえの返事も聞かずに行ってしまった鎌ノ助だが、あれは、沈黙は肯定と見なしたのだろうか。
一体何をさせられるのだろうと、なまえは今から身構えている。
彼は自分の血をいたく吸いたがっていたようだから、血、なのかもしれない。
この世界に来て、何度か血を吸われたが、あの感覚には未だに慣れず、それなのに、どうしてか嫌ではない自分が居る。
痺れるのが、寧ろ……。
「いやいや……何を考えてるの私は!」
畳に寝転がり、考えかけたことを忘れようとする。
そうこうしているうちに真田軍の面々が帰ってきたのか、騒がしい空気がなまえの部屋まで流れてきた。
皆を出迎えに行こうとしたら、鎌ノ助はすぐにやって来た。
なまえの部屋に直行してきたのだろうか。
「鎌ノ助くん、怪我はない?」
「うん」
「他の皆は?」
「……それより、忘れてないよね?」
約束、と耳許で囁かれる。
いきなり目の前まで近付いてきた鎌ノ助に、なまえの鼓動が速くなった。
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