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《花まる》坊っちゃん成長中

第2章 坊っちゃんは小学生。


 坊っちゃんは3年4組。戸川先生が担任のクラスとなった。
 坊っちゃんのクラスメイトの名前は、すぐに暗記するように指示された。顔写真入りのリストはありがたい。私も何とか一週間で覚えた。

 坊っちゃんが起きる前から、メイドは大忙しだ。朝食の準備、学校の準備、ベッドのシーツを替えてメイキング、掃除、ペットの世話、それらを手分けして担当する。
 私は新入りなので、誰でもできる掃除に割り振られることが多い。ペットの世話はまだできない。オールド・イングリッシュ・シープドッグのミス・ビクトリアことビッキーは、私にはまだ懐いてくれていないのだ。

 坊っちゃんは、秀治さんの運転するロールス・ロイスで学校へ行く。送り迎えや、坊っちゃんの身の回りの世話は秀治さんがすべて担当している。
 ちなみに、秀治さんは坊っちゃんのクラスメイトの名前を一晩で覚えていた。頭が上がらない。
 坊っちゃんのことに関しては、秀治さんが一番理解しているのだ。

 メイドの仕事が終わると、勉強会だ。
 先週は全員で坊っちゃんのクラスメイトの名前を覚えたが、今週からは主に私の勉強だ。マナーや英語、一般常識など、中卒の私に教えてくれるのは元メイド長の田中さん。先日、定年退職したおばあ……おば様だ。
 田中さんはさすが長年花輪家に仕えていただけあり、花輪家の事情にも明るいし、針仕事など覚えるべき家事も教えてくれる。何とも頼もしい、大先輩だ。

 学校から帰宅したあと、坊っちゃんは曜日ごとに習い事をしている。月曜日はバイオリン、火曜日はピアノ、水曜日フランス語、木曜日インド哲学、金曜日お茶とお花、土曜日英会話……通信簿がオール5であることも頷ける。坊っちゃんはかなりの努力家なのだ。
 習い事の先生方のもてなしも、メイドたちの仕事のうちだ。先生方の送迎はフットマンの仕事。秀治さんではない。

「明日は友達が来るよ」

 夕飯時の坊っちゃんのその言葉に、誰しもが驚いた。秀治さんだけは柔和な笑みを浮かべていた。

「失礼がないようにね」

 みんなの背筋がピンと伸びる。
 誰が来るのだろう。
 明日にならないとわからない。

 あぁ、失礼なことだけはしてしまいませんように……!

 私は坊っちゃんに慣れていて、失念していた。
 坊っちゃんのクラスメイトは、小学三年生である、と。

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