第6章 ココア〈O×S〉
~S.
目を覚した時には夜で、俺は一人ベットの上に
寝っ転がってた。
「…、智く、」
台所から、リズムよく何かを切る音が聞こえる
いっつもこうだ。俺が、形勢逆転狙っても、
智くんはいつもひらひらと躱す。
今回も、せっかく盛ったのに、結局こうだ、
半分諦めかけた俺はダルい体を動かし、台所に
立つ智くんに後ろから抱きつく。
「んぉ、…どおしたしょーくん」
作業してた手を止めてこちらに向き直る智くん
「ん〜、なんとなく、」
そう言えば、智くんは笑って、なんだそれ。と言った。
「今日のご飯はなぁに?」
「ん〜?何だと思う?」
「えぇ、?あ!さかな!」
フライパンの上にある魚をみて言えば、
「んはは!範囲ひろぉ」
と、また智くんが笑った
「ほっけだよ、今日は」
フライパンの上からお皿へ移し替え、着々と準備
していく智くんを後ろで見てたら智くんが
「しょーくん、ココアいれて?」
盛るなよ〜。なんて笑った。
「もお、やらないよ、」
参りました。みたいな声で言いながら、俺は
昼間問題を起こしたお揃いのカップをだし、
準備をする。
「体は?…もう平気?」
「ん、もう大丈夫」
スプーンで粉を掬って、パサパサといれてく。
隣では智くんがタンタンとキャベツを切っている。
こんな、他愛もない話が今は居心地がいい。
「んふふふ、好きだなぁ」
つい漏れた俺の本音に、智くんは笑って
「オレのが好きだよ」
そう、さらっと格好いい事を言った。
「〜、ずるいよね、智くん」
赤くなった顔を隠す様に俯いて、2つのカップに
お湯を注いでく。
智くんの言葉が、俺の体に滲みていく。
もう、この生活が続くなら、いいかな
そう、少し目を閉じて、また開いた。
甘い、甘い。ココアのように、
溶けてしまいそう。
END.