第13章 シュレーディンガーの猫〈O×S〉
~▽女性サイド
思えば全部、智さんの思惑通りなんだ。
あれもこれも、それも全部。
翔くんに出会った時も、全部仕組まれてた。
翔くんだけが知らない、裏の事情
「はじめまして、大野です」
そう笑った智さんにぞくりとした。初めて会った
時、私に向けた牽制の目
何となく、この人ならやりかねないと思った。
私の前に翔くんと遊んでた彼女と連絡をとった時も
上手く接触できた時も、多分智さんは計算してた。
「必要以上の模索はしないでね。あとしょーくんに
疑われる様な行動、言動は控えて?今言った事
守れば後は何してもいいよ。あ、それと君の友達
でイイ人居たら教えて?よろしく」
テレビではあり得ない程の饒舌さに、圧倒されたけど
何も言わない。
「わかりました、探しておきます」
「で、次いつ会うの?」
興味なさそうにグラスを傾けながら聞いてくる智さん
「次…、は土曜日です、」
手帳を見ながら言えば、クスクスと笑う智さん
「土曜日ね、ありがと」
何で笑ってるのかわからず首を傾げる
「あぁこっちの話、」
「そう、ですか」
今の会話に、笑う所なんてあっただろうか
何て話をしたのが数日前。何で笑ってたのかが
わかった気がする。
翔くんはよく、土曜日に会いたがる
それが何を意味するのかは知らない。
手帳に書き込んでいたら、携帯の画面にメッセージ
がうつる。それは智さんからで
『お前香水かえろよ。匂いきついわ』
「……まじですか、」
元カレに貰った物だから使ってたけど、智さんに
言われたら、変えるしかなさそうだ。
『すぐ新しいの手配します』
そう送れば既読がつくだけで返事はかえって
こなかった。
匂いうつったのか、まぁ…数分前まで一緒に居たから
当たり前か。
それにしても、智さんの言うとおり翔くんは必ず
智さんのとこに帰るのか。
「…だから香水の匂いか…、」
悪い人。この言葉は翔くんに言ったけど、
智さんに言うべきだったかな…
そう思いながら使ってた香水を捨てた。
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