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イチイ

第8章 第7章 接触


 どうにもできなくなり、ネイロは涙
さえ覚えた。
 
 時間にしたらほんの1分程だろう。
けれど、気の遠くなるような時間を感
じていた。
 
 この際誰でもいい。誰でもいいから
この視線から逃れる術をくれ。
 
 そんな祈りも虚しく、廊下には誰も
いない。
 
 閉まった教室の扉からはざわざわと
話し声がするのに、廊下には自分と目
の前の生徒以外誰もいない。
 
 呼吸さえしづらくなった時、救世主
とも思える足音がした。
 
 それと一緒に声がした。
 
「零!」
 
 白髪の生徒の視線が一瞬だけ声の生
徒に向かう。
 
 その一瞬で充分だった。ネイロはそ
の生徒から充分な距離を取る。
 
 そして声の生徒を見た。スカートを
翻しながら小走りで駆け寄ってくる。
 
 声の生徒はネイロの横を通り過ぎる
と、白髪の生徒の前で止まった。
 
「さっき、中庭でサボってた理事長か
ら後で理事長室に来るようにって。
 
 また何かしたの?」
 
 零と呼ばれた生徒はその質問に答え
ずに、またネイロを見た。
 
 ネイロは身体を強ばらせる。
 
 声の生徒も振り向いて、ネイロを見
た。その瞬間どきっとする。
 
「知り合い?」
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