第17章 ☆Story15☆ 熱い恋の季節のはじまり
「そういやお前……さっきなに言いかけたんだ?」
『えぇ?多分誰からか電話かかってくるんじゃないって言おうとしたの。
でもちょうど掛かってきたからいいかなぁって笑』
「……お前、その姿になってから変な能力ついたんじゃねぇか?
てか、喋るぬいぐるみになってる時点で特殊能力っぽいけど……」
『まぁまぁ今は細かいこと気にしないの〜笑』
「今は、ね……」
『そのうちわかる時が来るから笑』
「……お前と、別れる時か?」
『……。』
太輔の言葉に、百合から笑みが消えた。
「いつか別れがくる……そう言ったな……」
『……うん、そうだね。
私はずっと、この世界に居続けることができないから……』
「……俺は、お前との時間を大事にしたい……」
『太輔……』
「……今度、お前も海行くか?」
『……うん!』
「……(微笑)」
(やっぱり、お前は昔から変わらないな……ゆりにも、会わせてやりたいが……)
『海行くなら日焼け止めは必須だよねぇ……』
「……。」
(無理、だよな……もうあいつの中でこいつは死んだことになってるし……
俺以外に、存在がわかるのは駄目だって言ってたしな……)
太輔は目の前にいる母親に会わせてあげられないことに少し胸を痛めた。
(今コイツを本当に必要としてるのは、俺じゃなく……ゆりなのにな……)
『ねぇねぇ太輔!』
「何だ?」
『ゆりが海水浴かプールに行ってるビデオはないの?』
「あぁ……海行ったやつだったら別のに入ってたと思うけど……これじゃねぇか?」
太輔はビデオ棚からDVDを取り出し百合に渡した。
『ありがと!』
そして百合は器用にDVDをセッティングし再びビデオ鑑賞開始。
太輔も百合の隣に座り、ビデオを鑑賞するのだった。
_ビデオの中
『うぅ……こわいっ!』
『何もいないから大丈夫だ。足だけでもつけてみろ。』
_ピチャア…『……やあ!!』
画面に映っているのは海に怯えているゆりの姿。
太輔はそれに慣れさせようとしていた。