第11章 ☆Story9☆ 試合観戦
「14年前に、私を産んだ5日後に……亡くなったんです……」
「っ……」
彼女の母親は、すでに他界していた……しかも、
まだ記憶が定かでもないであろう赤ん坊の時に……
彼女の瞳は、とても悲しそうだった……。
「っでも……母は今でも私を見守ってくれています……この、
空の上で……(微笑)」
「っ……」
「それに、私は母から受け継いだものがあるんです。直接、母が死ぬ間際に……」
「ぇ……」
#NAME1#はつけていたであろうネックレスを外し憲吾の前に出した。
「……。」
「っこれは……指輪?」
「はい……父が、母の誕生日の時に渡したネックレスです。
このリングには、父の想いが込められていて、文字に掘られているんです。」
「……。」
憲吾はネックレスを受け取り指輪に掘られた文字を見る。
そこには……
[Dear Yuri
You're the most important person to me.
from F.T]
英文でメッセージが彫られていた。
「ゆり……お前と、同じ名前……なのか?」
「はい、母が私に授けてくれた名前です。」
「……。」
いまいち、英語は自信ないが単語の意味を取って見ると、大まかに何を言ってるのかはわかった。
意味は……あなたが、大切……とでも言ってるのだろうか……
「父は、母に永遠の愛を誓いました……この指輪にも、それが込められているんです。」
彼女の父親……あの時の、あの人か……
『っゆり!』
『っ!?……っパパ……!』
彼女が“パパ”と呼んだあの人……
「……お前は、本当に恵まれているな……
正直、羨ましいよ……」
「ぇ……」
母親にも、父親にも……俺は捨てられた……だから、親の愛なんてわからない……でも彼女は、
でも彼女は、父親から愛されている……母親からも、愛されていたんだと、彼女の話を聞いて感じた……。
「……俺には、そんな母親も父親もいないからな……」
「っ……」