第11章 ☆Story9☆ 試合観戦
そして憲吾はスマホを取り出し……
「……本当に、いいのか?」
「はい……ありがとうございます。
これ、私のQRコードです……」
「……わかった……」
ゆりは自分のLINEアカウントであるQRコードを憲吾に見せた。
そして憲吾はラインを開くとカメラモードでゆりのQRコードを読み取った。
「……。」
「っ……」
(ちょっと、無理やりだったかもしれないけど……ゲットしちゃった……三船さんの連絡先……)
「……ぬいぐるみが、お前のアイコンなんだな……」
「ぁ、はい……!
母の、おさがりというか元々母のもので……私の、宝物なんです……」
「……そうか……」
「でも、その母はもう……いないんですけどね……」
「っぇ……」
「14年前に、私を産んだ5日後に……亡くなったんです……」
「っ……」
憲吾side
彼女との連絡先交換は、抵抗があったが吾郎の勢いに負け結局彼女とLINEの連絡先を交換した。
「……。」
(まさか、俺がこんな芸能人と……)
遠い存在のはずなのに……近くに感じる……
物理的な意味ではなく……連絡先を交換して、お互いの間が近くなったような気がして……
彼女のアカウントに目を向けると、アイコンは黄色のテディベアで、
ホーム画面は青空に虹が架かっている写真だった。
にしても、ぬいぐるみをアイコンに設定してるなんて意外だった……。
「……ぬいぐるみが、お前のアイコンなんだな……」
試しに話題を振ってみる。
正直、こういうことは苦手だ。というか自分から話を振ることはほとんどない……
でも……少しだけ、彼女のことを知りたいと……思った……
「ぁ、はい……!
母の、おさがりというか元々母のもので……私の、宝物なんです……」
「……そうか……」
母親からもらった宝物か……俺は、一度もそんなことはなかったな……
きっと彼女は、俺と違って愛されている……母親に……
「でも、その母はもう……いないんですけどね……」
「っぇ……」
母親がいない、って……?
どういうことだ……?