第11章 ☆Story9☆ 試合観戦
「俺には、そんな母親も父親もいないからな……」
「っ……」
そう、今の俺に親はいない……死んだかさえも、わからない……
父親は俺がまだ幼かった頃に母親と別れ、それきり行方は知らない。
母親は、俺を家に置いてそのまま失踪……その後は孤児院で育った。
そして、高校に上がるのと同時孤児院を出た。
それからはバイトと両立させながら今に至る……
「っ……そう、だったんですか……だから、あの時親に迷惑かけるなって……
言ったんですね……。」
「……そんなこと、言ったかもな……」
「……今なら、あの言葉の意味がよくわかります……」
「……。」
「……ぁ、そろそろ行かないと……」
ゆりはふと腕時計に目を向けた。
「……マネージャーでも、来んのか?」
「はい……それじゃ、そろそろ行きます。
涼介さんを待たせるといけないので……」
「……わかった。勘付かれないように、行けよ……」
「はい……あ、あの……」
「なんだ?」
「……用事が済んだら、LINEしてもいいですか……?」
「……あぁ、構わない……」
「ありがとうございます。それじゃ、私はこれで……みなさんも、失礼しました。」
ゆりはペコリと憲吾たちに頭を下げた。
「おう!気をつけてなー!」
_ペコリ「はい(微笑)」
ゆりはもう一度頭を下げるという医務室を出て行った。
「……ヤッベェ、超可愛かったぁ♪
ホント憲吾!お前羨ましすぎだろ!!」
「うるせぇよ……てか、お前も試合があるんだろ……」
「話逸らしやがってぇ……
ホントは嬉しいんだろぉ?♪」
「……。」
嬉しくないと言えば、嘘となるのだろうか……
さっきまでの感情は、今までにないもだった……。
「……ま!お前は今日のラスト試合、頑張れよ!
んでもって優勝だ!」
「人の心配より、自分の心配しろよ。」
「へいへい(笑)
先生、この感じだと憲吾……試合続行できそうですね。」
「あぁ、そうだな……二人とも、全力で試合に臨んでこい!」
「「はい(っ!)」」