第10章 ☆Story8☆ アイドルになる道
「申し遅れましたが、私は美澤瑛二。
このSymphonyの取締役を務めております。
今日はわざわざ足を運んでいただきありがとうございます。
娘さん達の将来に関わることですから、真摯に対応させていただきます。」
「……僕たちは、当然一般人ですから芸能界のことに関しては無知です。
そしてこの中には、芸能界で活動されていた方もいます。その方達の話を聞くと、
ゆりを、娘をそう簡単に芸能界に入れるというのはどうかと思いまして……
でも、本人はやりたいと言っています……」
「なるほど……その芸能界にいたというのは……」
「私小鳥遊詩音、今は専業主婦をしておりますが10年ほど前はアニーの専属モデルとして活動しておりました。」
「っまさか、あの藍沢シオンさん……」
「はい。」
「それはそれは……旦那さんの方もどこかで……」
「一応、モデルの方を高校の時にやらせていただきましたが、
モデルを辞めてからはアニーの方でメイクアップアーティストをしています。」
「あの凄腕メイク師と言われた……いやぁ、まさか芸能界に浸透していた方達が……」
「余談ですけど、千鶴ちゃんのいとこには天羽颯太がいます。」
「天羽颯太、現在はデザイナーとして活動している……」
「えぇ、それと……」
詩音は太輔に目を向けた。
「……?」
瑛二は太輔に視線を向けた。
「……あまり、公の場で言わないようにしていますけど……
妻は、元Annie所属のモデルだった……玉森百合です。」
「っ……!
あ、あの……玉森百合……」
瑛二は目を見開いて驚いた表情を見せた。
「……。」
「美澤社長も、彼女をご存知で?」
「それはもちろん、突如新生の若手モデルが現れたと思ったら……
わずか1年余りで姿を消した……業界では、なかなか有名な話ですから……」
「……。」
「なるほど……どおりでそうだったか……」
「……?」
「私がスカウトをしようと思ったきっかけは、
藤ヶ谷様の娘さんであったゆりさんを見たからです。
彼女には、秘められた力が宿っている、直感的に感じました……。」
「……。」
(……やっぱり
あいつの娘だな……)