第3章 ☆Story1☆ 人気者は大変
7月7日は、あのふたりにとって特別な日……
だって、7日はふたりの結婚記念日だったんだもん……。
まさか、結婚した日に死んじゃうだなんて、誰も思っていなかったと思う。
だから、ちょっと複雑……おめでたい日のはずなのに、悲しい日……。
結婚記念日であるのと同時に、命日だなんて……パパが一番辛いと思う……。
でもその前に……私の誕生日があるんだよなぁ……2日、
7月2日は私の14歳の誕生日……。
私が生まれて、たった5日後にママが死んじゃったんだよな……
だから、私は自分の誕生日があまり好きじゃない……。
いつも、同時にママが死んだあの日を思い浮かべてしまうから……。
ゆりは枕脇に置いてあるテディベアに抱きつきながら顔を疼くめていた。
ちなみにこのテディベアは百合が16歳の誕生日の時に
裕太からもらったものである。
裕太が太輔に内緒でゆりにプレゼントしたのだ。
「……ママのぬいぐるみ……」
(まるで、ママの匂いがあるようで落ち着く……自分の思い込みかもしれないけど、
確かにママの匂いを感じてしまう……私って、重症なのかな……)
ちなみにこのぬいぐるみはいつもゆりが抱いて寝ている。
その事を知っているのはゆり自身ひとりである。
メンバーやファンには内緒にしている。
「……。」
(だって、くるとかに言ったら絶対からかわれるもん……
だから、私だけの秘密……ママ、
また夢に出てきてくれないかな……)
私が赤ちゃんの時は、よくママが出てくる夢を見ていた。
私とママの、秘密の会話……
ママは、あの言葉と同じで……
『やあ!ままとおなはし!』
_ママは、また遊びに来るよ?
だから、ちょっとだけお別れ。今度は、夢の中でね。
『あえるの?』
_うん、ママが会いにいくよ。
あの言葉通り、ママは私の夢に出てきてくれた……でも、
それは私が幼稚園にあがるまでで、
それきりママが夢に出てくることは一度もなかったの……。