第3章 ☆Story1☆ 人気者は大変
「パパ、本当は私が生まれて欲しくなかったって思ってる……?」
『っ!?』
つい、心にもない言葉をパパに言ってしまった……
なんでだろ……なんで……
「っだって、私が生まれなきゃママは!
死ななくて済んだのに……」
『っ違う!!』
「っ……!」
『誰も、お前が生まれて欲しくないなんて思っていない……』
「っ……」
『元々ママは、癌に侵されていた……どのみち、死ぬ運命だったんだ……
それを承知で、ママはお前を産んだんだ……』
「っ……」
そうだ、思い出した……ママは、私が生まれた事を喜んでいた……
うっすらと、覚えている赤ちゃんの時の記憶……
ママの優しい声、ママの柔らかい肌、ママの顔……不思議なことに、覚えている……。
そこには、パパもいた……私を、抱いてくれているふたりが……
『……確かに、俺は過去のことを引きずっているかもな……でも、
今俺が一番大切なのは、お前だ……俺の、たった一人の娘のゆりだ。
それだけは、わかってほしい……。』
「……。」
そうなのかな……?
私が、一番大切?
確かに、パパは私を大切にしてくれる……でも、ママも同じくらい……
『俺は、本当に感謝しているんだ。お前が、生まれてきてくれたことを……』
「……。」
『ママとも、あの日に約束したんだ……お前だけを、守り続けるって……』
「っ……」
(パパ……)
『だから、嘘でもさっきみたいなことは言って欲しくない。
ちゃんと、お前を愛してるってことを、わかってほしい……父親として……。』
「っパパ……」
『でも、だからこそママのことは……思い出したく、ないんだ……』
「っ……」
『……来週は、ママの命日だったな。
その日には、こっちに帰って来れるんだろ?』
「……うん、大丈夫だよ。」
『わかった。じゃあまた……』
「うん……おやすみなさい、パパ。」
『おやすみ、ゆり……』
会話終了ボタンを押しパパとのお話を終わらせた私、
私は力が抜けたようにベッドに寝っ転がった。
「7月7日……ママの命日、か……」