第3章 ☆Story1☆ 人気者は大変
だから、私は仕事をしている時でも身につけているの。
だって、これはママが残してくれた唯一の形見。
ママが写っているアルバムとかは、パパが持っているんだけど……
あまり見せてくれません……だから、
ママの写真は自分で調べてネット上で眺めることしかできません。
仕事をしているママは見られても、
パパと過ごしているママの姿はほとんど見たことがありません。
でもこっそりと、陸さんや和真さんに頼んで見せてもらったりしてるんだ……
もちろん、パパには内緒で……。
その時のふたりは、いつも幸せそうでした。
パパが、どれだけママを愛していたのか、写真を一目見ただけで分かってしまいます。
ママとの思い出は少なくても、私はママもパパも同じくらい大好きです。
「……ママ、」
勝手に言葉に出していた“ママ”という言葉……。
『っ!?』
「ママに、会いたいな……」
『っ……ゆり!!』
「っ!?」
パパの怒鳴り声で私は一気に現実に戻った。
パパに顔を移すとさっきより怖い顔で、こっちを見ていました……。
『ゆり、ママに会いたくても会えない……わかってるだろ……』
「……でも、ママはここにいるんでしょ?私の、心の中……パパの、心の中……」
『……あぁ、そうだ。
でも、本当に会うことはできない……ただ、自分でそう言い聞かせるだけだ……』
「っでも!ママはあの日私に言ったの……いつも、私のそばにいるって……いつも、
見守っているって!」
『……。』
「パパは、過去のことを引っ張るなって言いたいんでしょ?
もう、赤ちゃんの頃に死んだママのことをいつまでも引きずるなって言いたいでしょ?」
『……。』
「っ……一番過去を引きずっているのは、パパのほうじゃん。
パパがいつまでも……ママを……」
『っ……!』
パパは、未だママのことを引きずっている……。
本当は、ずっとそばにいて欲しかったって……そう思っている……
私なんかより……