第8章 ☆Story6☆ ママの命日
ゆりはタイスケに連れられ、再び庭園にやってきた。
「夜の風気持ち〜♪
鈴虫もいい感じだし!」
「……あの、母のことで何か?」
「いや……ゆりちゃんのママがあの玉森百合ってことに驚いてさ……
今思えば、叔父に玉森裕太がいるんだったらなんとなく想像つくのに、
俺今日まで全く気づかなくてさ(苦笑)
ゆりちゃんも、俺の記憶に残っているあの玉森百合に似てるなって、
思ってさ……」
「生前の母を、知っているんですか?」
「まぁ、俺がまだ10歳とかのガキだった頃にさ。
結構クラスでも話題になってたんだよ。特に女子の間でさ。」
「ママは、人気モデルでしたからね……」
「クラスで何かと話題になってれば、それが気になるじゃん?
ちょうど俺の姉貴が、LABBITを読んでてさ、その雑誌を見てみたら……何つーか、
惹かれたって、言うのかな……」
「……まさか……」
「まぁ……ちょっとした一目惚れってやつ(苦笑)
俺、まだその頃はジャニーズに入ってなくて……芸能界とか興味なかったんだけど……
急に興味が湧いてさ……」
「……藤ヶ谷さんが芸能界に入ったのって、ママの影響……?」
「そうだね……なんか、芸能人にでもなったらこの人に会えるのかなーって気な感じで……
試しにジャニーズに履歴書送ってみたんだよね。」
「……それで、すぐに受かったんですか?」
「ううん(苦笑)
ざっと1年くらいかな……2週間くらい経って、特に何も連絡こなかったから落ちたんだなって思って諦めたの。
でもさー……忘れた頃に電話が来たんだよ(笑)
それで、11歳の時ジュニアとしてジャニーズの仲間入りしたってわけ。」
「……。」
「これで一歩近づける!……って思った矢先、
引退宣言しちゃって……俺がステージに立つ前に、
ダンスを必死になって覚えている頃に……引退、パッと芸能界から姿を消して……
俺がやっとステージに立たせてもらう頃には……もう……」
「……死んでいた、んですね……」
「……そう、
俺が会う前に、死んじまった……」
「……。」