第8章 ☆Story6☆ ママの命日
裕太からやっと逃れられたゆりは挨拶を終えた。
「ゆり、」
「あ、桂木さん。何ですか?」
「墓参りが済んだら、仕事関係でお願いしたいことがあるんだ。」
「お仕事の……?」
「ちょっとした、曲のアレンジだ。
詳しいことはまた後で、事務所には伝えてある。」
「ぁ、わかりました……」
(なんだろ……)
「ただいま戻りましたー!」
「どうやら陸たちが戻って来たぽいな。」
玄関先に目を向ける太輔。
そしてお座敷にぞろぞろとやって来た。
「あ、ゆり達も着いたんだな!」
「うん、獅依留もおかえり。」
「外あっちぃ……」
「向こうで麦茶もらって来たら?
ちょうどおじいちゃんが持っているよ。」
「うんそうする!」
「叔父さんも飲む?」
「んじゃもらおうかな。
でも、麦茶飲み終わったら俺は先に出るよ。」
「……試合?」
「あぁ、ジュニアテニス大会のな。
ちょうど俺のクラブの生徒が3時から試合なんだ。
一応コーチだからな。」
「陸も大変ねー……」
「そういう美香はどうなんだよ?」
「自分のアイデアを採用してもらうのが難しいってことかな……でも、
やりがいはすごい感じてるから続けていくつもり!」
「クリエイター系も大変だぜー?
いっつもオフィスバタバタしてるもん(苦笑)
でも、異様に趣味の話は合うんだよな……九条はどんな感じ?先生の仕事!」
「それなりに。でもまさか、
あいつと同じ学校に勤めることになるとは思っても見なかったけどな……」
「しかも七華高校だろ?「叔父さん、麦茶‥」あ、そういえば!!」
_ビクっ!「きゅ、急に何!?
危うくこぼすところだったじゃん!」
「あーわりぃわりぃ、サンキューな。」
陸は獅依留から麦茶をもらう。
「叔父さん、急にどうしたの?」
「俺、夏休み明けから七華高校のテニス部の顧問することになったから!
藤ヶ谷先生と九条先生、よろしくー(笑)」
「おま急すぎ!」
「そんな話、まだ聞いてねーぞ……」
和真と太輔もびっくりした様子で陸を見ていた。
「すごい縁だね……繋がりというか……」
(和真くんも陸くんも七華高校出身だし……)