第6章 意気地無しのくせに。【森山由孝】
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街灯がやけに眩しい。
・・・いや、気のせいだと思うけど。ずっと街灯ばっかり眺めてるからだと思うけど。
その理由は・・・こいつに。
この、森山由孝にあった。
さっきからこいつもそっぽを向いて黙りきっている。
いつもは見かけた女神のような女子の話で盛り上がるのに。
別に・・・ヤキモチなんて、しないのに。だから、話してくれてもいいんだよ。
なのに・・・
『・・・っ森、──っ』
・・・そんなに真剣な横顔見たら、茶化せなくなる。
『・・・じゃあ、』
「あぁ。また明日」
背後には、そびえる我が家。
見るからに電気が点いてなくて、また残業かなって溜め息をついた。
『・・・また、明日・・・?』
「ふっ・・・何で疑問系なんだ?」
明日、も、また会えるのかな。
って、一瞬不安になったのに。
こいつの笑顔を見たら吹き飛んでしまった。
──去る背中を見つめる。
広くて、大きくて、私なんかとは比べ物になら無い。
───そんな背中に、手を伸ばす。
じめじめとした湿度が腕に纏わりついて、動きを鈍くさせる。
だけど。
汗ばんだ掌が、風を切ったとき。
『────待って!!!』
私は、初めて彼を引き留めた。