第6章 意気地無しのくせに。【森山由孝】
すっかり日も暮れて、
久しぶりにふたりで帰る道も色を変えているみたいに思える。
『そういえばさ、黄瀬くんがまた愚痴ってたよ(笑)』
「またか、黄瀬・・・いい加減現実を受け入れてほしいな」
それ、自分に言ってね。
森山と付き合って何ヵ月か経つ。
初めて一緒に帰った頃は、手も繋げなかったのにね・・・(笑)
・・・・・・でも。
今は・・・別の意味で、繋げてないなぁ。
不意に視線が下へと下がる。
目に映ったのはポケットに突っ込んだ森山の腕。
・・・はぁ。
「・・・何かあったのか?」
『・・・え?』
「眉間にシワが寄ってるぞ。
・・・何かあったなら相談してくれ」
『・・・』
それが・・・言えたら苦労しないんだけどね。
首を横に振って、なんでもないと告げる。
・・・わかってる、森山にはバスケがあるから邪魔したくない。
そんな気持ちが、見え隠れして・・・煩わしいんだ。
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寄り道をしないで、ふたりとも歩いていく。
見るからに歩幅が大きいのに、私に合わせてくれているところもすごくグワッとくる。
誰だ、残念なイケメンなんて言ったの!
・・・確かに残念だけども!!
『・・・じゃあ、こっちだから』
「いや、家まで送ってくに決まってるだろう」
『えっ』
内心の喚きを抑えてクールに振る舞ったつもりなのに、別の何かが抑えられなくなりそうだ。
───あぁ、好きだなぁ。
って───、思ってしまう。
『・・・森山は、いつも』
「ん?」
『・・・・・・なんでもない』
・・・まだ、言わないでおくね。
きょとんとしたその頬をつねった。
痛そうに眉を寄せたこいつに、私はまだ恋煩いしていくのだろう。