第5章 嘘つきは大嫌い【今吉翔一】
今吉side──────────---
・・・俺、キチガイなんちゃう?
抱き締めあうふたりを、ポカンとして見とった。
柚井の目に溜まっとる・・・涙。
それを浮かべられるんは俺だけやった。
・・・と、思っとったのに。
────胸の奥が、チリチリしとる。
やがて体を離した柚井は、俺の方を向く。
その目は真剣味を帯びとって、目が逸らせん。
『・・・先生』
花宮のセダンが走り去る。
それをぼーっと見とった。
『・・・先生』
「・・・」
『・・・こっち見てよ』
───嫌や。絶対。
しょうもないけどな、この目は見たらいかんて思うねん。
見たら───・・・
『先生』
『────そんなに、嫌い?』
『・・・興味なんて、なかった?』
─────また、落ちてまう。
「・・・んなわけあるかい、アホ」
この声は、聞こえとるんかな。
聞こえてへんほうがええな。
心のどっかが、プツンと切れる。
─────もう、どないしたらええねん。
気がついたら柚井の腕を引いてエレベーターに黙って乗っとった。
柚井の声が、ずっと、続いとる。
だけど、それも無視をした。
────早く早く早く・・・────
───こいつを・・・