第5章 嘘つきは大嫌い【今吉翔一】
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・・・どうして?
どうして・・・居るの?
「───維」
『っ! 真兄!』
「・・・真兄ぃ?」
運転席から降りた男。
私が信頼してやまない、あの人。
『ちょちょちょ・・・』
「なんだよ」
・・・の、筈なのに。
『何してんの!? ここ本当に真兄の新しい家?』
「んなわけねえだろ」
『はぁ!?』
・・・初めて、裏切られた。
「んな驚くことでもねぇだろ。
・・・泊めてもらえ、今日は」
『はぁ!?』
先生の家になんて、ありえない。
「・・・お前とあいつの関係は終わったんだよ。もう今は赤の他人だ」
『っ・・・』
「・・・だから、いいじゃねぇか。
───素直になれ、いい加減。バァカ」
────っ・・・。
『・・・真、兄・・・』
《ダメに決まってんだろ恋なんて》
《お前には俺だけでいいんだよ》
《俺が認めねぇと許さねぇからな》
・・・あの異常なまでの厳しさ。
それなのに・・・。
『・・・いい、の?』
無意識に零れていた言葉。
ふっと笑った真兄が視界を埋め尽くして。
────抱き締められた。
「・・・いいから言ってんだろ。
───お前だって、もう大人・・・だしな」
『っ・・・うん』
───今の今まで、この腕で守ってもらってきた。
だから────
『───大好き』
「・・・そうか」
耳元に降る笑い声。
この声が、大好きだ。