第1章 似た者同士は惹かれ合う?【花宮真】
「・・・・・・お前が」
俺を好きだって分かってた。
吐息のように溶け込む声は、
腰の辺りを浮かせていく。
俺はお前が一喜一憂してんのが
見てて面白かった。
顔をあげないまま、
前髪を撫でる掌。
「・・・いい暇潰しだって思った」
心臓がヒヤリとする。
凍傷みたいに、痛んだ。
「・・・暇潰し、だったのにな」
いつもの彼じゃない。
きっとこの先の言葉を言ったらこう告げるのだろう。
んなわけねぇだろ、バァカ
・・・それでいい。
私と花宮の間に関係なんて作ってはいけない。
作られてしまったら、壊すしかない。
消してしまうしかない。
「・・・なぁ」
でも
「・・・どうしてくれんだよ」
この声に
「俺もお前と同じ馬鹿じゃねぇか」
嘘があるようには、思えなかった。
思いたく、なかった。
『・・・今頃?』
「は?」
『今頃になって気がついたの?』
「はぁ?」
『あんたは馬鹿だよ』
「あ"!?」
馬鹿だよ。大馬鹿。
『似た者同士?
って惹かれ合うんだよね』
そう思いたい。
彼の涙なんか、作り物のはずなのに。
花宮真という人間は、
慈悲なんて持っていない。
それはもう鬼のような。
でも、今彼は・・・
『人間だから。
馬鹿でも人を愛すし、馬鹿でも涙を流すんだよ』
瞳から流れる雫を持った、ひとりの人間。
愛しいと思った。
好き、ってこういうことなんだね。
「・・・クソアマ」
『何言ってんの馬鹿』
「・・・チッ」
『あ、ちょ、どこ触ってんのっ、あ・・・』