第5章 嘘つきは大嫌い【今吉翔一】
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あれから、2年や。
───早いもんやなあ。
一時足りとも忘れたことはあらへん。
柚井の、あの涙。
───知っとったで。
ワシに姿を見せる一瞬前まで、ボロボロ泣いとったこと・・・
制服の袖が少し濡れとったし、目にもぎょーさん涙が浮かんどった。
「・・・知っとるんやで、ワシは・・・」
お前が、実の実は猫被りや無いこと。
人の見えんところで汗水流しとった。
人の前ではクール振るくせにな、
あいつはいつもいつも・・・───
────・・・
─────ワシの心を抉ったんや。
東京のネオンはワシにはキツい。
花宮の運転は性格のわりには安全やから眠たくなる。
「はーなみやー」
「・・・」
「・・・なんや、無視かいな?」
「・・・・・・なんですか」
おーおー、偉い子やなー。
「・・・降ろしますよ?」
「まぁまぁ、そう言わんといてぇな・・・
・・・・・・お前は、信じるか?」
「は?」
────生徒と教師の、恋を。
静寂が、辺りを包む。
微かなエンジン音と、微かな息遣いと。
東京っちゅーもんは、そのすべてを鮮明に表すんや。
・・・だから、嫌いなんや。ここ。
「───何を思ってんのか知らねぇけどな」
くいっと上げた眼鏡の先で、おもろい眉毛が眉を寄せる。
「───人が人を好きになることに信じるもクソもねぇだろ、バァカ」
「・・・お前が生徒に恋したとか、この際どーでもいいじゃねぇか。
・・・そんなもんだろ、恋なんて」
───人なんて───