第5章 嘘つきは大嫌い【今吉翔一】
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『────ッ先生!』
階段。
やっぱりここにいた。
何故だか、ここにいるような気がして。
誰も来ないような場所に来ているような気がして。
「・・・なんや、どないしたん?」
ノートをぐっと握りしめる。
先生、気づいてたんでしょ。
私が───あなたを好きってこと。
『・・・先生、どうして私が猫被りだって分かったんですか?』
───でも、そんな確信に迫るようなこと、訊かない。
私たちは一線なんか越えない。
「・・・どうしてだろうな。
・・・デジャヴ、やったからかな?」
『・・・デジャヴ?』
ふむ、と考えた割には変な答え。
先生らしいと言えば、そうだけど。
「・・・昔、おったんよ。柚井みたいな奴がな」
そう笑った先生。
その笑顔、裏がありそうだけど・・・好きです。
『・・・そんな理由で?
・・・もう一周回ってすごいですね』
皮肉っぽく言ってみる。
先生に敵わないのは知ってるけど。
「はは、やろ?」
その笑顔も、好き。
────好きだから、こそ。
『────先生、』
スカートの端をぐっと握りしめて。
今日で最後だ。
『────さよなら』
毎日言ってきた言葉も、今日はなんだか重く感じて。
明日からは、他人だね。
・・・もしかしたら、今からかも。
そうだとしても、もう大丈夫。
────忘れよう。
私の、たった数ヵ月の恋心。