第5章 嘘つきは大嫌い【今吉翔一】
維side───────────---
【────卒業生、合唱。】
前から教え込まれていた動きが、一斉に。
ペラペラのスカートを翻して、
小さくなった制服で。
────卒業、なんだ。
「「「──卒ー業、人は────」」」
何もかも、当たり前だったのに。
猫を被ることも、
作り笑いも、
偽善者ぶるのも。
────変えられてしまった。
《ええ顔しとるやないか、自分》
あの日に。
《次、バレたらつまらんで。
もうお痛はせんとき》
全部、あの日に。
・・・壊された。
────先生の前では自然体になってしまって。
────嫌なのに、作り笑いでいいのに。
────どうしてか、心の底から笑えてしまうんだ。
─────短い短い、恋が覚める。
『────・・・好きです・・・先生』
誰にも気づかれることの無い言葉は、
ピアノにのって、消えていく。