第5章 嘘つきは大嫌い【今吉翔一】
今吉side──────────---
《───私、好きです。ここが》
第一声が、それやで。
そら、ビックリするわな・・・。
案の定、聞いてた奴らはポカンとして、言った本人までもがポカンとしとったわ。
その後慌てて、
《すみません、忘れてください》
ってな。真顔で顔真っ赤にして言いよったわ。説得力ないっちゅーの。
「いやー、柚井の感動したわー。
一言めに《私、好きです。ここが》だもんなー!」
『ちょ、やめて』
ほらな。早速弄られとるわ。
・・・そういや。
────未だに、分からんな・・・───
こいつらが・・・卒業するっちゅーこと。
実感が沸かない、言うんか?
信じられへんとか、そないなもんやない。
何って言うか・・・何ちゅーか・・・
───突然、言葉が降ってくる。
「・・・信じたか無いねん」
・・・そうや。・・・それや。
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あいつに初めて会ったんは、あの日・・・やったな。
バスケ部で、真夏のあっつーい日やった。
《・・・大丈夫かいな。手伝おか?》
ほんまに、これはほんまに本心からやった。
細っちい腕で、大量のタオルとドリンクなんか持っとって。
絶対折れるやろ、ってな。
そう思ったんや。
《・・・大丈夫です。ありがとうございます》
────あぁ、作り笑いや。
直感なのか、勘なのか。
よう分からんけど、そう思った。
こいつにはあいつと同じ香りがしとる。
昔からそう思っとったけど、接点が無かったからなぁ。
3年になって、担任を任されたときは今や!って思ったな。
興味から始まり、
好奇心で続き、
いつのまにか──────
「────好きになっとった、わなぁ」
────知っとる。知っとるで。
これが、恋っちゅーのも。
知っとる、けどな。
やっぱダメやねん。
───先生、と、生徒、やから。