第5章 嘘つきは大嫌い【今吉翔一】
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「キャプテンの山口っす。
色々あったけどバスケやれて最高でした。ありがとう!」
「よっイケメン大将~」
「バレンタインにチョコ山ほど入ってたくせに~」
「サッカーもできるくせに~」
・・・僻みかよ。
「じゃ、次・・・柚井さん」
『はい・・・』
前へ一歩出ることもなく、
その場で。
『・・・私・・・』
視線が集まる。
・・・珍しく、緊張してる。
小さく、気づかれないような深呼吸をして、目蓋の裏に思いを馳せた。
────1年、春。
真兄がやってたからって理由で始めたバスケ部マネ。
本当に理由はそれだけで、私は憧れの彼に近づきたかっただけだと思う。
────2年、夏。
今吉先生に初めて頼まれたお使い。
嫌で嫌で仕方がなかったけど、薄ら笑いを浮かべて走った。
その時が、初めての会話。
────3年、冬。
・・・この時、私は・・・
────先生を好きになった。
でも、届くはずなくて。
こんな想い、したくなくて。
なのに、止まらなくて。
必死に抑え込んで。
それでも涙が出てきて。
化けの皮が剥がれたみたいに、
知らなかった私が出てくる。
そんな、高校生活。
そんな想いも、明日で終わり。
明日が終われば、先生と私は他人だ。
───それでいい。
それが一番、私達が幸せになれる選択。
何が正しいかなんて誰にも分からないんだから良いじゃない。
この世界に、正しい選択なんて存在してない。
だから、良いの。
────好きでした、ってね。
過去形にして、終わらせられれば大成功。
それでいいの。
『────私は、』
────でも────でも・・・
────もう少し、
この場所に────居たかったな。